AI活用
不動産広告のAI加工画像、表示ルールと注記文言の実例を解説
公開日 2026年8月7日
執筆: カグオクAI編集部 / 監修: 増山大知
不動産広告に掲載するAI加工画像は、宅地建物取引業法(宅建業法)・不動産の表示に関する公正競争規約・景品表示法という3つの枠組みの範囲内であれば、そのこと自体が違法になるわけではありません。ただし、実際の状態と著しく事実に相違する表示や、実際のものよりも著しく優良・有利であると誤認させる表示は、いずれの規制でも「誇大広告」「不当表示」として禁止されています。
本記事では、バーチャルステージング・家具消し・画質補正といったAI加工画像を不動産広告に掲載する際の表示ルールを、条文に基づいて整理します。「CGによるイメージです」といった注記文言の実例や、やってはいけない加工との線引きも具体的に解説します。
この記事を読むことで、AI加工画像を自社の広告にどう取り入れれば法令・自主規制に沿った運用になるかを、担当者レベルで判断できるようになります。
この記事を読むとわかること
- AI加工画像に適用される3つの法的枠組みの全体像
- 宅建業法第32条「誇大広告等の禁止」がAI加工画像に及ぶ範囲
- 不動産の表示に関する公正競争規約が定める写真・CGの表示ルール
- 「CGによるイメージです」等の注記文言の実例と入れる位置
- やってはいけない加工と、判断に迷うグレーゾーンの整理
不動産広告における「AI加工」とは何を指すか
本記事で扱う「AI加工画像」とは、画像生成AIを使って物件写真に手を加えた広告写真全般を指します。大きく分けると、次の3種類です。
バーチャルステージング(AIホームステージング)
空室の写真に、画像生成AIで家具やインテリアを合成する手法です。入居後・購入後の暮らしをイメージしやすくする目的で、賃貸・売買の両方で使われています。
AIホームステージングの仕組みや費用については、別記事「AIホームステージングとは?費用・仕組み・従来型との違いを実務目線で解説」で詳しく解説しています。
家具消し
居住中の物件写真から、家具や生活用品をAIで取り除き、空室に近い状態に見せる手法です。居住中のまま売却活動をする場合や、退去直後で片付けが済んでいない物件で使われます。
画質補正・背景の差し替え
露出・色調・歪みなどをAIで自動補正する加工と、曇天の空を晴天に置き換えるといった背景の差し替えです。撮影条件のばらつきを均す目的で使われます。間取り図の自動生成や物件説明文のAI生成は、写真の加工とは別の論点のため、本記事では扱いません。
不動産業務全体でのAI画像活用の見取り図は、「不動産×AI画像活用の全体地図」も参考にしてください。
AI加工画像に適用される3つの法的枠組み
AI加工画像を広告に載せる際に関係する法令・自主規制は、主に3つあります。宅地建物取引業法、不動産の表示に関する公正競争規約、そして景品表示法です。
| 名称 | 位置づけ | 運用主体 | 違反時の主な措置 |
|---|---|---|---|
| 宅建業法第32条 | 法律(誇大広告等の禁止) | 国土交通省・都道府県 | 指示・業務停止・免許取消、6月以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金(第81条) |
| 不動産の表示に関する公正競争規約 | 景品表示法に基づく業界の自主規制 | 不動産公正取引協議会連合会・各地区協議会 | 警告又は50万円以下の違約金、警告に従わない場合は500万円以下の違約金等(構成団体所属・個別参加の事業者が対象) |
| 景品表示法 | 法律(優良誤認表示等の禁止) | 消費者庁 | 措置命令、課徴金 |
宅建業法(法律)
不動産広告の誇大広告を直接禁止する法律です。免許を持つ宅建業者すべてに適用されます。
不動産の表示に関する公正競争規約(自主規制)
不動産公正取引協議会連合会が定める公正競争規約で、写真・CGの扱いについて宅建業法より具体的な基準を置いています。規約第1条は、この規約が「不当景品類及び不当表示防止法(昭和37年法律第134号)第36条第1項の規定に基づき」定められたものであることを明記しています。
出典:不動産の表示に関する公正競争規約・同施行規則|不動産公正取引協議会連合会
景品表示法(法律)
不動産に限らず、あらゆる商品・サービスの表示を規律する法律です。不動産の表示規約は、この景品表示法の枠組みの中で業界が自主的に定めた具体化ルールという位置づけになります。
出典:景品表示法|消費者庁
宅建業法第32条「誇大広告等の禁止」とAI加工画像
条文が禁止する表示
宅建業法第32条は、次のように定めています(一部抜粋)。「宅地建物取引業者は、その業務に関して広告をするときは、当該広告に係る宅地又は建物の所在、規模、形質若しくは現在若しくは将来の利用の制限、環境若しくは交通その他の利便又は代金、借賃等の対価の額若しくはその支払方法……について、著しく事実に相違する表示をし、又は実際のものよりも著しく優良であり、若しくは有利であると人を誤認させるような表示をしてはならない」。
対象となるのは、所在・規模・形質・利用制限・環境・交通の利便・価格や支払方法など、取引条件に関わる事項です。AI加工によって室内の広さや設備を実際と異なって見せる表示は、この「形質」に関する誇大広告に該当し得ます。
条文のポイントは、「著しく」事実に相違するか、「著しく」優良・有利と誤認させる場合に禁止対象となることです。多少の色調補正程度であれば直ちに違反となるわけではありませんが、線引きは個別の事案ごとに判断されるため、迷う加工は後述の公正取引協議会等へ確認するのが安全です。
罰則・行政処分
宅建業法第32条に違反した場合、第81条により6月以下の拘禁刑もしくは100万円以下の罰金、又はその併科の対象となります(2025年6月の拘禁刑創設前は懲役でした)。行政処分として、指示処分・業務停止命令・免許取消しの対象にもなり得ます。
刑事罰の対象になる点で、次に説明する表示規約違反(違約金という民事上の制裁が中心)よりも重い枠組みであることを押さえておく必要があります。
出典:建設産業・不動産業:宅地建物取引業について|国土交通省
不動産の表示に関する公正競争規約が定める写真・CGのルール
宅建業法が抽象的な禁止規定であるのに対し、不動産の表示に関する公正競争規約(以下「表示規約」)は、写真やCGの扱いについてより具体的な基準を定めています。
写真は「取引するもの」が原則
表示規約第15条は、広告に写真・絵図等の事項を表示する場合には、施行規則で定める基準に従って表示することを求める表示基準です。これは、掲載自体を義務付ける「必要な表示事項」(規約第8条以下)とは別の枠組みで、「表示するときはこの基準による」という位置づけになります。写真について具体的に定めているのが同規約施行規則第9条(22)で、「宅地又は建物の写真又は動画は、取引するものを表示すること」としています。広告に載せる写真は、実際に取引する物件そのものを撮影したものが原則です。
例外として、建築工事完了前など、取引する建物の写真を用意できないやむを得ない事情がある場合に限り、同じ施工者が過去に手がけた類似建物の写真を代わりに使うことが認められています。この場合、いずれも当該写真が他の建物のものである旨を明示しなければなりません。そのうえで、外観の写真は、構造・階数・仕様が同一で規模・形状等が類似する建物のものに限られ、取引する建物と異なる部位がある場合はその部位を明示する必要があります。内部の写真は、写される部分の規模・仕様・形状等が取引する建物と同一であることが使用の条件とされています。
CG・完成予想図の明示義務
CG・完成予想図に関するルールも同条に定められています。施行規則第9条(23)は、「宅地又は建物のコンピュータグラフィックス、見取図、完成図又は完成予想図は、その旨を明示して用い、当該物件の周囲の状況について表示するときは、現況に反する表示をしないこと」としています。CGであることを明示する義務と、周辺環境を実際と違って見せてはならないという2つの要請が、この一文に含まれています。
出典:不動産の表示に関する公正競争規約施行規則|不動産公正取引協議会連合会
不当表示に該当するケース
表示規約第23条(42)は、モデル・ルームや写真、CG、完成予想図による表示について、「物件の規模、形状、構造等について、事実に相違する表示又は実際のものよりも優良であると誤認されるおそれのある表示」を不当表示として禁止しています。AI加工によって実際より広く、あるいは実際よりきれいに見せる表示は、この規定に触れるおそれがあります。
表示規約は生成AIの登場より前に整備された規定のため、「AI加工」という言葉自体は条文に出てきません。実務では、バーチャルステージングや家具消しもこの「写真・絵図」の規定に沿って扱うという解釈が一般的ですが、個別の表現が規約に適合するか迷う場合は、地区の不動産公正取引協議会に事前相談することをお勧めします。
首都圏や近畿圏などの地区協議会は、バーチャルステージングで設置する家具について「実際にその部屋へ搬入できる大きさか」を実務上の判断基準の一つとして示すことがあります。運用の細部は地区協議会によって異なるため、掲載前に確認しておくと安心です。
違反した場合の段階的な措置
表示規約に違反した場合、次のような段階的な措置が定められています。これらの措置は、公正取引協議会の構成団体に所属する事業者、又は規約に個別に参加する事業者を対象とするものです(大半の宅建業者はいずれかに加盟しているため、実務上は広く及びます)。
| 段階 | 措置の内容 |
|---|---|
| 違反に対する措置(違反回数を問わない) | 違反行為の排除等を警告し、又は50万円以下の違約金 |
| 警告に従わない場合 | 500万円以下の違約金、公正取引協議会の構成員資格の停止・除名処分、消費者庁長官に対する必要な措置の要請 |
表示規約第27条第1項は、公正取引協議会が違反事業者に対し、違反行為の排除措置を直ちに採るべきことと再発防止を警告し、又は50万円以下の違約金を課すことができると定めています(違反回数を問いません)。事業者がこの警告に従わない場合は、500万円以下の違約金、資格停止、除名処分等のより重い措置や、消費者庁長官に対する措置要請の対象となります。
出典:不動産の表示に関する公正競争規約・同施行規則|不動産公正取引協議会連合会
加工の種類別に見るOK・NG・グレーゾーンと注記文言の実例
法令・自主規制を踏まえると、加工の種類によって扱いは次のように整理できます。
| 加工の種類 | 表示規約上の扱い | 注記の要否 | 現況写真の併記 |
|---|---|---|---|
| バーチャルステージング(家具の合成) | 現況に反しない範囲で許容、CGの明示が必要 | 必須 | 推奨 |
| 家具消し(生活用品の除去) | 部屋の形状・広さを変えない範囲で許容 | 必須 | 推奨 |
| 画質補正(露出・色調) | 実際の色調・仕上がりと大きく乖離しない範囲で許容 | 状況により推奨 | 不要な場合が多い |
| 空・背景の差し替え | 周辺環境を偽ると不当表示のおそれ | 必須 | 推奨 |
| 傷・シミ・破損の消去 | 現況を偽装する行為でありNG | — | — |
| 違法建築部分・越境物の隠蔽 | 宅建業法第32条・表示規約第23条の誤認表示に該当するおそれでNG | — | — |
この表には、条文上の義務にあたる部分と、実務上の推奨運用にあたる部分が混在しています。「CG・加工である旨の明示(注記)」は、施行規則第9条(23)が定めるCG等使用時の明示義務や、規約第23条の誤認表示禁止に対応する条文上の要請です。一方、「現況写真の併記」は、誤認防止のために事業者が任意で行う実務上の推奨運用です。ここで注意すべきは、注記を入れれば適法になるわけではないという点です。注記の有無にかかわらず、現況を偽って優良・有利に見せる加工そのものが禁止されるのであり、注記はその加工を正当化する免罪符にはなりません。
許容されやすい加工
バーチャルステージング・家具消し・軽微な画質補正は、部屋の形状や広さそのものを変えず、現況を偽らない範囲であれば、CG・加工である旨の明示や注記を適切に入れたうえで、実務上広く行われています。注記はあくまで加工の事実を示すためのものであり、現況と著しく異なる印象を与える加工まで許容するものではありません。
注記があっても認められない加工
壁のひび割れや雨漏り跡の消去、増築による違法部分の隠蔽、隣地との境界に越境している物の消去、部屋の形状や面積を実際と異なるように見せる改変は、現況を偽る加工です。これらは注記を入れたとしても認められず、表示規約第23条や宅建業法第32条に触れるおそれがあります。
生成AIが陥りやすい不自然な仕上がりのパターンと、掲載前のチェック観点は「AIステージングでよくある失敗と回避策」で詳しく解説しています。
判断に迷うグレーゾーン
画質補正をどこまで行ってよいかは、条文上に明確な数値基準がありません。逆光補正や色かぶりの補正のように、実際の内装の色・質感を大きく変えない範囲であれば、多くの実務では許容されていると考えられています。空の差し替えについても、周辺環境の印象に影響しない範囲かどうかで判断が分かれるため、迷う場合は地区の公正取引協議会へ確認することをお勧めします。
注記文言の実例
注記文言は、加工の種類ごとに次のような表現が実務でよく使われています。
| 加工の種類 | 注記文言の例 | 掲載位置の目安 |
|---|---|---|
| バーチャルステージング | 「家具・小物はCGによるイメージです」「AIにより家具を合成しています」 | 写真に接するキャプション |
| 家具消し | 「本画像はAIにより一部の家具・生活用品を除去して加工しています」 | 写真に接するキャプション |
| 空・背景の差し替え | 「空の画像は合成イメージです」 | 写真に接するキャプション |
| 完成予想パース | 「完成予想図(CG)であり、実際とは多少異なる場合があります」 | 図に接する位置 |
注記の位置・大きさと品質チェック体制(一次情報)
カグオクAIの運用では、注記は写真の下、または画像内の目立つ位置に、本文と同程度以上の大きさの文字で入れることを標準にしています。文字を極端に小さくしたり、スクロールしないと見えない位置に注記を置いたりすることは、表示規約が求める「分かりやすい表示」の趣旨に反すると考えています。
生成した画像を掲載する前には、家具の遠近・スケール・光の向きが不自然でないかを人の目で確認する工程を必ず挟んでいます。AIが生成した家具のサイズが実際の部屋の寸法と矛盾していないかは、機械的なチェックだけでは見落としがちな観点です。
料金体系についても、加工1枚あたりの従量制を採用するサービスが多く、注記文言を入れる作業自体に追加料金が発生しないのが一般的です。バーチャルステージングは空室の反響改善、家具消しは居住中売却案件、というように用途に応じて使い分ける現場判断が実務では定着しています。
現況写真を併記する運用の原則
AI加工画像を掲載する場合は、加工前の現況写真も同じ広告内に併記するのが実務上の基本です。加工写真だけを見せると、内覧時に受け手が抱くギャップが大きくなり、クレームやトラブルの原因になります。
加工前・加工後を並べて見せる意味
現況写真と加工後写真を並べて掲載する運用は、表示規約が課す義務ではなく、事業者側の任意の工夫です。誤認防止の実効性が高いため、多くの実務担当者がこの運用を採用しています。
バーチャルステージングと実物家具の違い、誤認防止表示の考え方は「バーチャルステージングとは?仕組みと注意点を解説」も参考にしてください。
居住中物件のプライバシー配慮
居住中の物件で家具消し加工を行う場合は、プライバシーへの配慮も必要です。居住者の私物が写り込んだ現況写真をそのまま公開してよいかは、加工の適法性とは別に検討すべき論点です。
居住中マンションの写真掲載とプライバシー配慮の考え方は、「マンション売却における居住中の室内写真の載せ方」で詳しく整理しています。
よくある質問(FAQ)
Q. AI加工した写真に「CGによるイメージです」と書けば、どんな加工でも掲載できますか?
いいえ、注記は万能の免罪符ではありません。傷やシミの消去、部屋の形状・広さを変える改変など、現況を偽る加工は、注記を入れても表示規約や宅建業法の趣旨に反するおそれがあります。
Q. バーチャルステージングで合成する家具は、実在しない家具でもよいですか?
実在しない家具でも合成すること自体は一般的に行われています。ただし、部屋の実際の寸法に対して不自然に大きい、または搬入できない大きさの家具を合成すると、間取りや広さを誤認させる表示に当たるおそれがあります。
Q. 家具消しで居住中の生活感を消すのは違法ですか?
家具消し自体が直ちに違法になるわけではありません。部屋の形状や設備を変えない範囲で行い、加工した旨を注記し、現況写真も併記するのが実務上の基本的な進め方です。
Q. 画質補正(明るさ・色調の調整)にも注記は必要ですか?
軽微な露出・色調補正であれば、注記を必須としない運用も見られます。ただし、実際の内装の色や質感と大きく異なる仕上がりになる場合は、注記を入れる方が安全です。判断に迷う場合は地区の公正取引協議会に確認することをお勧めします。
Q. 表示ルールに違反すると、どうなりますか?
不動産の表示に関する公正競争規約(構成団体に所属する事業者、又は規約に個別参加する事業者が対象)に違反すると、公正取引協議会からの警告や50万円以下の違約金の対象となり、警告に従わない場合は500万円以下の違約金等のより重い措置の対象になります。宅建業法第32条に違反した場合は、行政処分に加え、6月以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金という刑事罰の対象にもなり得ます。
まとめ
- AI加工画像の表示ルールは、宅建業法・不動産の表示に関する公正競争規約・景品表示法という3つの枠組みで整理できる
- 表示規約は、写真は「取引するもの」を使うことを原則とし、CGや完成予想図は「その旨を明示」した上で現況に反する表示をしないことを求めている
- 「CGによるイメージです」等の注記は、写真に接する見やすい位置に、十分な大きさの文字で入れるのが実務の基本
- 傷・シミの消去や部屋の形状を変える改変など、現況を偽る加工は注記があってもNG
- 判断に迷う表現は、掲載前に地区の不動産公正取引協議会へ確認するのが安全
カグオクAIは、不動産会社様向けのAI画像生成ツールとして、表示ルールを踏まえた注記の運用もあわせてご案内しています。お手持ちの物件写真で、仕上がりと注記の入れ方を確認できる無料トライアルをご用意しています。